---イチョウ葉の有用性についてお聞かせください
医薬品としては30年以上前から独仏をはじめ欧州各国で実績
植松:長超高齢化社会を迎え、我が国では介護保険制度が2000年4月より導入されましたが、要介護者のなんと7割以上に脳卒中後遺症か老年期痴呆症が関与していると言われています。特に、脳血管性痴呆症やアルツハイマー型老年期痴呆症は痴呆の2大原困となっており大きな社会問題です。
このような脳卒中後遺症や痴呆症の救世主として期待されているのがイチョウ葉エキスGinkgo Biloba
Extract(GBE)です。GBEの歴史は古く、ドイツのDr.Schwabe社がエキス抽出に成功した1950年代に溯りますが、医薬品としては30年以上前の1968年から独仏をはじめ欧州各国で脳循環代謝改善薬としての実績があります。
現在、GBEは世界20カ国以上で医薬品として年間約600億円の売り上げがあり、トップシェアーです。日米では健康補助食品あるいはサプリメントとして販売されていますがそれを加えると世界で1000億円以上の売り上げがあります。GBEの成分はフラボノイド24%とテルぺノイド6%であり、作用機序は下記の通りです。
- フリーラジカル捕捉,脂質過酸化反応抑制
- PAF(血小板活性化因子)受容体拮抗作用
- 血管拡張作用:カテコールアミン放出の促進、プロスタサイクリンとNO産生促進
- 虚血脳における脳代謝改善(糖消費の増大と電解質異常の抑制)
- 脳ムスカリン受容体数増加とノルエピネフリン代謝亢進
脳虚血時に血管内皮や神経細胞の障害するといわれているフリーラジカルを消去する細胞保護作用、抗血小板血栓作用や血管拡張作用などの微小循環改善作用、さらに糖代謝や神経伝達の促進を介する脳代謝機能賦活作用などが報告されています。
---有効性を立証する主な試験は
1992年より米国で大規模な試験がスタート
植松:主な臨床研究としては、1992年のランセット誌(注1)に多くの二重盲検臨床試験の結果が掲載されています。めまい、頭痛、耳鳴り、記銘力低下などの脳循環不全に対してはその時点で40のコントロール試験が行われています。そのうち質の高い8試験ではGBEl12〜160mg/dayを6〜12週投与されていますが、7試験でプラセボ群に対し有意な有効性が確認されています。重大な副作用はみられていませんが、頭痛、消化器症状、アレルギー性皮疹が非常にまれに報告されています。
さらに、1997年JAMAの11月号(注2)にアルツハイマー病と多発脳梗塞痴呆を含む309例に対するプラセボ対照二重盲検比較試験の結果が発表されました。このスタディーではGBE120mg/日、52週間投与の効果がアルツハイマー認知機能および行動の評価法を用いて検討されました。その結果、GBE投与群はプラセボ群に比し有意に認知機能や社会活動における改善がみられました。1年間に渡る長期試験にもかかわらず実薬群の患者の脱落が、プラセボ群より有意に少なかったのです。
このような結果は大変異例な事で、GBEがいかに副作用が少なく、服用し始めた患者自身がその効果を自覚したかを物語っているに他なりません。ここでもGBEの有用性と安全性が再認識されています。米国ではこの結果を踏まえ1992年初頭より、アルツハイマー型老年期痴呆症を効能対象とした医薬品承認を目指し、大規模な臨床試験がスタートし、現在、第V相試験を有望な結果で終了しています。
---今後、日本においてイチョウ葉エキスの評価がさらに高まることが期待されますが
イチョウ葉エキス製品の効能評価と製剤の差別化が急務
植松:
このような欧米におけるGBEの高い評価を踏まえ、我々は10名の脳血管障害後遺症の患者にGBE−24(山之内サンウエル)240mg/日を4週間使用し、その前後において臨床症候の変化およびSingle
Photon Emission
Tomography(SPECT)による局所脳血流の変化を検討しました。その結果、自覚症状では頭重感、めまい、頭鳴りなどに有用であり、精神症状として自発性低下・不安・抑鬱などにも有用性がみられました。
全体として約7割の患者に何らかの臨床的な改善がみられました。患者自身の印象として、”頭がスッツキリしてやる気が出て来た”という表現が多くみられました。脳血流はSPECTを用い明らかな低血流領域にROIをとり、小脳の平均カウントとの比の百分率で評価しました。脳血流を測定した10例中8例に血流改善がみられ、低血流領域の平均値の維移は投与前70.0±8.8%から投与後77.2±8.1%へと有意な増加を示しました。(注3)
我が国ではここ数年、脳循環代謝改善薬の再評価が施行され、その多くが医薬品から削除されたことは記憶に新しいです。本邦では規定により、複数の成分を含有する薬剤は傷寒論にある漢方エキス剤しか事実上医薬品として承認されていません。このためイチョウ葉エキス製品は健康補助食品として多数の製品が市販されています。
しかし、その品質は欧州の医薬品と同等のものから単にイチョウ葉成分を含むものまで玉石混合の状態です。医薬品として正式に規格化されJAMAの報告(注2)で使用されたドイツ製抽出エキスから、日本製、韓国製、中国製まであるようですが、エビデンスベーストメディスン(evidence-based
medicine)の観点から臨床試験で実際に有用性が確認されているのは独仏製のエキス製剤のみです。
日本で最も使用されている独Schwabe社抽出エキスはGBE-24およびGBE-24Dr(山之内サンウエル)です。イチョウ葉エキスは本邦でも一般消費者にはテレビや新聞、雑誌などの影響でかなり知名度が上がっていますが、脳神経や痴呆を専門とする臨床医の認識は、欧州でベストセラーとなった医薬品であるにもかかわらず低いといえます。 Medlineによる文献検索(Egb761)を行ってみると、欧米ではここ10年基礎・臨床研究を含め数百件の報告がありますが、本邦の研究は非常に少ないです。我が国で使用されて来た脳循環代謝改善薬が臨床の場から消えつつある今、イチョウ葉エキス製品の効能評価と製剤の差別化が急務です。
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