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変貌する脳卒中 脳梗塞は年々増加している
ほんの十数年前まで、わが国の死亡原因のトップの座を占めていた脳卒中は、その座を癌(悪性腫瘍)に譲り、脳卒中の死亡率は減少しつつあると認識されています。確かに予防法や治療法の進歩に加えて、救急医療の充実により、脳卒中で命を失うことは減っておりますが、脳卒中の発病率は目覚しく減少したわけではありません。

脳卒中とは、脳の血流が滞ったり、血管が破綻することによって脳の働きが損なわれた状態(病気)の総称で、脳血管障害と同じ意味です。
このなかには、脳の血管が動脈硬化などの原因で閉塞して、血流が滞り、脳細胞のエネルギー源である酸素やブドウ糖が届かなくなり、脳細胞が死滅して脳の働きに障害が生じる脳梗塞、脳内の細い血管が破れて出血し、血の塊が周りの脳細胞を押し潰して脳の働きが損なわれる脳出血(脳内出血)、そして脳の表面を覆うくも膜と云う薄い膜と脳の表面のあいだを走る血管にできたコブ(動脈瘤)が破裂して障害を生じるくも膜下出血が含まれます。
図 1-3にもありますように、脳卒中の死亡率は近年確実に減少していますが、発病率は必ずしも減少しておらず、脳梗塞の割合が多くなり、とくに高齢者ではこの傾向が顕著です。
以前は、脳卒中による後遺症は、半身不随(片麻癖)や言語障害がおもなものと考えられていましたが、最近では軽い脳卒中を繰り返してボケてしまうこと(血管性痴呆)が大きな問題となっています。
したがって、まず最初に脳卒中にならないように予防すること、そしてもし軽い脳卒中になっても痴呆にならないように、私たちは予防策を検討すべきです。
脂質の摂り過ぎ、ストレスに注意 キーワードは動脈硬化
脳卒中の予防には、高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、喫煙、ストレスなど危険因子と言われる要因を取り除くことが第一です。血圧を正常に保つことが、もっとも大事な脳卒中予防対策であることは言うまでもありませんが、近年、脳梗塞が増えている背景には、われわれ日本人がだんだんと欧米化した食事に移行して、脂質摂取量が増大していることも挙げられます。体質にもよるので、個人差はありますが、脂肪の摂り過ぎは、コレステロールをはじめとする血液中の脂質を増加させ、動脈硬化を進行させると考えられています。
コレステロールは脂肪分の一種で、生命を維持するためには不可欠な物質ですが、この中にはいわゆる善玉と悪工があり、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)には、動脈硬化を進行させる働きがあります。活性酸素などによって酸化されたコレステロールは、動脈の壁に溜まって、血管壁を厚くして血管の内径を狭くします。
この状況がさらに進行すると、血管の壁が膨らみすぎて内側に破れてギザギザな状態(粥状動脈硬化と言われる)になります。その血管のギザギザの部分を修復するため、破損部分を覆うように血小板が集まってきます。この血小板の集まりが非常に狭くなった血管を塞ぐ原因になります。その場で血管を塞がない場合でも、その一部が剥がれ落ちて、血流に乗ってさらに奥のほうに運ばれて、細い血管を塞ぐ原因にもなります。
最近の数千人を対象とした大規模臨床研究では、コレステロールの上昇を抑える薬を服用することで、脳卒中の予防や再発の抑制に効果が証明され、高脂血症と脳卒中の因果関係が再認識されています。

軽い物忘れは痴呆の始まり? 脳の健康維持はコミュニケーションから
痴呆と診断される患者さんの割合は年齢とともにだんだん多くなります。痴呆のなかには、アルツハイマー病と血管性痴呆が含まれますが、秋田県の調査でも、60代では全体の5%以下ですが、80歳を超すと痴呆患者さんの割合は15〜20%を占めます(図5)。原因はどうであれ、ボケずに長生きすることが皆の願いです。
軽い物忘れは、ある程度の年齢になると、誰もが多かれ少なかれ経験することです。それが痴呆の始まりではないかと思って落ち込んでしまうことも少なくありませんが、軽い物忘れだけの場合には、老化に伴う変化とみなされ、軽度認知障害(MCI)と呼ばれて、痴呆から区別されています。脳卒中を起こした後で、軽い物忘れを自覚することもあり、この場合にも血管性痴呆とは区別して、血管性軽度認知障害と呼ばれています。

図6に示しますように、痴呆の場合には症状が徐々に進行するのに対して、軽度認知障害の場合には、物忘れの症状に多少変動はあるものの、進行しないことが大きな違いとされています。ところが、当初は軽度認知障害と診断された方の中にも、後になって症状が少しずつ進行することもあるので用心が必要です。お年寄りの時聞の使い方を調査した研究では、痴呆にならなかったグループは、痴呆に移行したグループと比較して、外出する回数、電話を掛ける回数、家族以外の人間と接する回数が圧倒的に多かつたという結果が示されています。すなわち、社交的で、家族以外の他人とよくコミュニケーションを図っている人は、痴呆になり難いということになります。家族以外の他人と接することのメリットは、ちょつと緊張して気配りをすることや、おしゃれをして外出することが、脳に対するよい刺激になると考えられています。
軽度認知障害に留めるためにイチョウ葉エキスの効用
明らかな痴呆症状を呈するアルツハイマー病や血管性痴呆状を改善するという画期的な治療法は見つかっておらず、いまのところ、症状の進行を抑制するという消極的な効果しか期待できないのが現状です。一方、軽い物忘れ、すなわち軽度認知障害に関しては、こうした概念が普及してまだ日が浅いこともあって、わが国では治療方法に関する研究はまだ進んでいません。海外では、軽度認知障害から痴呆へ移行することを阻止することに主眼をおいた臨床研究は始まっており、徐々に成果が発表されています。
イチョウ葉エキスは、古くから記憶や判断などの脳機能を高めることが知られており、わが国では健康食品として流通していますが、ヨーロッパでは認知機能を高める医薬品として承認されています。
軽度認知障害を対象とした臨床調査では、イチョウ葉エキスを服用することで、記憶、計算、判断などの項目で改善が見られたことが報告されています。さらにイチョウ葉エキスは、軽症のアルツハイマー病や血管性痴呆に対しても、認知機能を改善あるいは維持する作用があることが明らかにされています。
イチョウ葉エキスには、抗酸化作用を持つフラボノイドと、血液の粘度を低下させるギンコライドなどの自然界に存在する物質が含まれ、血管障害を予防する働きと、血行を促す働きがあります。まったく健康な人がイチョウ葉エキスを服用したときにも、記憶や計算などの認知機能検査の成績がさらに向上したという結果が明らかにされ、脳卒中を予防する効果のみならず、認知機能を高める作用を有するところが注目されています。
イチョウ葉エキスは、過酸化物質による血管や脳細胞に対する障害を防止し、血液循環を促進することから、いわゆる酸欠状態でも脳内のエネルギー代謝を促進する働きや、低下した脳血流を促進する効果も期待されています。また落ち込んだ気分を高揚させる働きがあります。こうした複数の作用が相俟って、認知機能を高めるものと考えられます。
脳梗塞の危険因子について生活習慣の改善がポイント
脳梗塞の予防には、動脈硬化を引き起こす生活習慣を改めることが肝心です。食事は塩分と高脂肪食の摂取を控えめにして、禁煙に心掛けましょう。またお酒の飲みすぎや太りすぎにも注意して、水分摂取も忘れないようにしてください。ストレスの発散には気分転換や適度の休息も大切です。高脂血症、糖尿病、高血圧症、心臓病の方は発症する確率が高いので、動脈硬化の発症を回避するために、さらなる注意が必要です。そして、日常生活では、積極的に外出して、友人とのコミュニケーションを図ることが健康で長生きする秘訣といえるでしょう。
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