■プラセンタは古くて新しい医薬品
 プラセンタには、紀元前から世界で薬として用いられてきた歴史があります。
 中国では、秦の始皇帝(紀元前259年〜紀元前210年)が不老不死の妙薬のひとつに用いられたといわれています。
 唐の時代(618年〜907年)に編纂された漢方医学書『本草拾遺』の中では、「人胞」、「胞衣」の名で紹介されています。さらに時代が下がって、明の時代(1368年〜1644年)に著された『本草網目』には「紫河車(しかしゃ)」の名前で紹介され、肉体的および精神的な疲れや衰えに対して広陽のある滋養強壮の漢方薬として珍重されていたことがわかります。楊貴妃も常時「紫河車」を服用していたと伝えられています。現在でも、漢方に欠かせない薬のひとつです。
 ほかにも韓国の漢方医学書『東医宝鑑』(1613年)の中に「紫河車」は登場しています。日本でも江戸時代、加賀の3大秘薬のひとつといわれた混元丹には、この「紫河車」が含まれていました。
 また西洋では、古代ギリシャの医師で”西洋医学の父”、”医聖”と呼ばれるヒポクラテスが治療に利用していたと伝えられています。
 エジプトの女王クレオパトラや、フランスの王妃マリー・アントワネットは、若返り・美容の目的で利用していたといわれます。
 しかし、東洋で綿々と漢方薬として使われていったプラセンタも、なぜか西洋では中世以降忘れられた存在となっていました。それが、1930年代旧ソ連で研究され、プラセンタの有用性が再び日の目をみるようになります。

■フィラートフ博士、稗田憲太郎博士、そして現代
 1930年代、旧ソ連・オデッサ医科大学教授のフィラートフ博士は、「組織療法」にプラセンタを使用し、プラセンタを再び表舞台に引き出しました。
 「組織療法」とは、病気の患部の皮膚の中に、冷蔵保存しておいたプラセンタなどの別な組織を埋め込むというものです。この結果は、博士の「動植物の組織は冷却すると、その低温という厳しい刺激によって生命力が活性化され、組織再生能力を持つ細胞賦活因子や生態刺激素が誘発され生成される」という考えに一致するものでした。博士は、プラセンタの作用に対し「プラセンタは、全身の機能を活発にするばかりでなく、病体部分の治癒を促進する作用に優れる」と報告しています。
 その後、この「組織療法」は日本にも伝わり、1950年、「組織療法」を研究していた医師たちが集まって『組織療法研究所』を設立。プラセンタエキスの注射液の開発にともない、1956年『メルスモン製薬株式会社』に発展させ、厚生省(現厚生労働省)から医薬品の認可も得て、更年期障害と乳汁分泌不全の注射薬<<メルスモン>>の製造・販売を始めます。
 またこれとは別ルートで、「組織療法」を日本に広めたのが、稗田憲太郎博士でした。
 稗田博士は第二次世界大戦中、満州医大の教授でしたが、敗戦後も中国に留まり、その間に巣プランスキー博士の「組織療法」と出会うのです。帰国後、久留米大学薬理学教室の教授を務め、プラセンタの利用に関する研究に情熱を傾けます。その結果、冷蔵したプラセンタから抽出したエキスを活用する「冷蔵胎盤漿液療法」の開発に成功します。その後、1959年に、稗田博士の研究に基づくプラセンタエキスの注射薬<<ラエンネック>>(当時は肝硬変の医薬品として、現在は適応が広がり、肝機能改善の医薬品として、厚生労働省から認可を取得)が登場しています。
 なお、日本におけるプラセンタの利用は、「組織療法」が最初というわけではなく、先に述べたように、その昔は中国から漢方薬として伝わり、江戸時代にはその応用で、加賀の3大秘薬のひとつといわれた混元丹などを生み出しています。

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■プラセンタの安全性について
 プラセンタエキスの注射薬は胎盤から抽出される、いわゆる臓器製剤ということで、感染などの安全性が問題になるわけですが、心配は無用です。注射薬は日本の病院において、正常分娩で生まれた人間の胎盤を原材料としており、胎盤中の血液やホルモンは、製造過程で100%除去されるために注射液中には、血液・ホルモンはまったく含まれません。
 当然のことながら、厚生労働省の厳しい基準をクリアしてはじめて「医薬品」の認可を受けているのですから、安全性については国のお墨付きといえます。
 注射薬「メルスモン」を例に紹介してみます。
 まず原料の管理ですが、複数の特定医療機関と専属契約を結び、梅毒・エイズ・B型C型肝炎などの感染症のない安全な胎盤を入手する体制を整えています。
 次に、検査に合格した胎盤を一定期間、冷凍保存した後、塩酸を加えて加熱し、分解物の水溶性物質(エキス)を得ます。その後、注射したときの痛みや組織の変性を予防するために、塩酸を蒸散させ、水酸化ナトリウムで中和してpHを6.8〜7.0(体液に近いpH。pHは酸性・アルカリ性を示す単位)にし、注射用蒸留水と無痛化剤ベンジルアルコールを加え、濾過します。これらの分解・蒸散肯定で100℃以上、15〜17時間(合計)の熱処理を行います。そして、最終段階としてこうして得たプラセンタエキスを滅菌アンプルに充填し、さらに120℃、30分間高圧蒸気滅菌を行います。
 以上のことからも、医療機関で感染の有無をきちんと選別した材料を使っていること、製造工程での熱処理(100℃以上で合計15〜17時間)がなされ、さらに最終製品の滅菌処理(120℃で30分間)を行っていることで、あらゆる細菌やウイルスは感染力を失い、安全性が十分に確保されています。
 さらに、最終製品検査として、タンパクが完全にアミノ酸に分解されているかどうかの確認試験や、無菌試験、動物試験等も行われ、製品の品質や安全性が十分に確保されています。

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