<高知の川と鮎のゆくえ>      

 高知は県土が太平洋に面し東西に長く、四万十川や仁淀川に代表される天然遡上河川が10河川以上ありその規模は全国に誇れるもので、正に鮎大国として君臨するに足る資質を持っています。                 その反面、漁場管理など先進県と比べて野放し状態でその優秀な資源の活用が十分なされていないのも現実です。しかし逆に野放しだからこそ今後の対策次第で川と鮎を蘇らす事はさほど難しい事では無いと言えます。  確かに日本の河川をとりまく環境は厳しいもので、高知の川も例外ではなく山の保水力の減退、ダムによる濁水及び分水の問題、農業排水そして家庭排水の問題さらに海水温の上昇、異常渇水など地球環境の影響等その諸問題の解決が不可欠ですが、それ以前に出来る事が在るのではないでしょうか?

日本最後の清流四万十川を例にとってみると、昭和50年代には全国一の漁獲高を誇り その数は市場に流通する鮎だけで千数百トンに上り、一方個人的に消費される量が多いことを考えると少なく見積もっても二千トンの鮎が夏の四万十川には泳いでいたのです。  しかし平成3年の大量遡上を最後に夏の異常渇水も手伝って激減の一途をたどって来ました。ではどうして少なくなったのかを考えてみると前記した諸問題もさることながら四万十川はなんといっても今では少なくなった天然遡上鮎の川だからでは無いでしょうか、確かに四万十川漁連では毎年5トン程度の放流を行っていますが天然遡上が順調であれば、これは四万十の鮎全体量の一割に充たない数字と考えて差支え無いのではないか、又言いかえれば天然遡上の良否がそく釣果及び漁獲高につながるのは明確なのです。

天然遡上が少なくなった要因はいくつか考えられるが、遡上時の水量不足や夏の渇水による水質悪化及び酸欠、そして最も大事な秋の産卵のための鮎流下が水量不足の為妨げられる等の水量の問題、四万十川の水質やそれを取り巻く環境の悪化さらに乱獲や密漁違反漁の横行その他が挙げられる。しかし水不足や環境の問題は近年四万十川保全意識の高揚に伴い流域では官民を挙げての様々な取り組みが実施されていて数年前よりは確実に良くなってきています。

一方乱獲の問題は一般的に火振漁の事を取り上げる人が少なくないが伝統的かつ幻想的で四万十の夏の風物詩としての火振漁は後世に残すべき漁法ではないか、又仮に観光火振漁として観光客の誘致をおこなえば相応の経済効果も期待できるのではないでしょうか。 「当然漁期や漁場の制限等考え直すべき点は多々あります。」

それよりも問題なのは密漁の横行そして瀬張り漁と落ち鮎漁にあるのではないでしょうか。瀬張り漁は四万十川のいたるところに柵を張りひどいのは金網まで使って完全に 遮断して産卵の為流下する鮎本来の行動を妨げしかも四万十川の美観を著しく損なう漁法で、水量不足も手伝って流下できずに上流に取り残された鮎を一網打尽に獲り尽す行為がどれほど愚かなことか、誰の目にも明らかです。

最大の課題といえるのが落ち鮎漁で産卵行為及び孵化そのものが阻害されている事実があるのです。平成12年からは禁漁期が半月延長されるなど一定の改善はされているが、鮎の研究者として知られる西日本科学技術研究所の高橋主任研究員の調査結果でも解るとおり鮎の産卵時期が従来は11月前後に一斉にピークを迎えていたのに対して、近年はさしたるピークも無く遅いものは翌年の1月にまでずれ込み長期化かしているという実状がありますが、これは海水温上昇の影響も然ることながら激減する種の保存を図る為のけなげな自衛行動では無いかと考えられるのです。 この様に鮎は厳しい生息環境に必死に対応しているのに対して人間は産卵場にいる鮎を獲り尽くしさらにはようやく産みつけられた卵を踏み荒らしておきながら「鮎が少なくなった」と嘆き、あげくの果てには河川環境の悪化が全ての原因で自身の愚かで無知な行為は全く顧みていなかったのです。 他県ですが、荒廃が著しく進みすでに終わったと言われた河川で鮎をほとんど獲らなくなったら近年大量の遡上があり鮎が蘇った河川がある注目すべき実例が数件あります。

この事でも解る通り鮎の環境適応力は非常に高いものがあると思われます。 実際平成12年は平成3年以来最高の遡上があり釣り人や地元で漁をする人々を楽しませたのは、前年秋の産卵期に川が大雨で増水したため産卵や孵化が結果的に保護されたのも大きな要因の一つと考えられます。 四万十川の規模そして水質及び環境はまだまだ全国に誇れるものが残されており、その生産性の高さには計り知れないものがあります。

上記でもわかる通り今すべき事は鮎の繁殖行動を保護して川の生産力と鮎自身の力を最大限に引き出す事にあり、そのためには瀬張りの全面禁止そして産卵場内での通年禁漁区域を最低50mの区間(両岸を横断する)に設定しさらに密漁者の取り締まり強化など漁場管理の徹底を図る事が急務なのではないでしょうか。この様に書くと釣り人の 手前みそな言い分ととられるかもしれないが、友釣は鮎本来の行動に沿った極めて自然な資源保護の点でももっとも理にかなった漁法であることは間違い無く、実際友釣のみ ではそこに生息する鮎の半分も捕る事は出来ないのです。

 今出来る事を早急に実行すれば四万十川は河川の形態をはじめ、天然鮎を育む条件を全て充たしておりその類稀な生産力、広大な収容力をもってすれば日本一鮎の住む川そして天然鮎の宝庫として日本最後の清流四万十川と呼ぶに相応しい川に蘇るのはそれほど遠い事ではないと思うのは私だけでしょうか。

蘇った四万十川には夢があります。たとえば2000tの鮎が帰って来たとしてその内半数の1000tの漁獲をすると現在最高級品の友釣の鮎は5000/kg以上で取引されているので50億円以上になります。これに付随して加工品の製造販売や遊漁者や観光客が来る事による観光収入それによる雇用の拡大等、大きな経済効果が期待できるのです。当然受入れ体制の整備も欠かせませんが大いなる可能性をもつ四万十川の恵みを活用する事が大事なのです。


四万十川を例にしましたが、これは高知県の他の河川にも事情や条件がそれぞれ在るにせよ当てはまる点があるのでは無いでしょうか。くり返しますが高知にはすばらしい資質をもった川が多くありその規模は全国に誇れるものです。 いまここで行政と県民が歩調を合わせて川を蘇らせ守る為の行動を起こさなければ高知の川と鮎は滅び行く運命をたどるのです。今ならまだ間に合います地元より県外の人々の関心が高いという温度差などあってはならないのです。

“自由は土佐の山間よりいず”

いまこそ土佐人魂を発揮して、「土佐の川」そして鮎を救い全国に発信しなければならない のです。

 

    四万十友釣会 田邊克彦

 

  

 

home