|
アユはなぜナワバリを持つのか? |
私たちが友釣りができるのは、アユが「ナワバリ」を持つという性質が強い魚であるためなのですが、では、アユは何のためにナワバリを作るのでしょうか? 今回は、アユのナワバリについて考えてみたいと思います。 春、遡上中のアユは群を作って移動しています。やがて定住するにふさわしい場所、つまり餌となるコケの豊富な場所にたどり着くと、群を作る性質は次第に弱くなります。そのうち、一定の場所を独占しようとするものが現れ、侵入してくる個体を威嚇、攻撃し、追い出そうとします。これがアユのナワバリ行動です。 アユのナワバリは専門的には摂餌ナワバリと呼ばれています。つまり、餌を巡っての争いということになります。
行き着く先は共倒れです。これを避けるための方法として、ナワバリが成立したという考え方があります。 京都大学におられた川那部浩哉さんの説です。もう少し詳しく紹介します。
例えば、海に棲む魚であれば、数が増えすぎて餌が不足し始めても分布を広げるという手段で共倒れを回避できます。 ところが、アユが棲む川は面積が限られていますから、分布を広げるという手段では限界があります。 アユにとって数が増えすぎることは大問題なのです。コイの仲間ではどうしているかというと、一定の大きさに成長するまで子どもを作らないという方法で、数の爆発を抑制することができます。 この方法は寿命の長いもののみに可能な方法で、1年しか寿命のないアユには不可能なやり方です。アユに可能な手段としては、餌を確実に獲得できる(生き残ることができる)ものを制限してしまう方法、つまり、ナワバリによる弱者の差別機構を作ることだったのかもしれません。 川那部さんはこのことを「全滅するには忍びないという大儀名分のもとにおける優者による弱者の差別機構」と表現しています。ところで、長い地球の歴史からみると温暖期にあたる現在、川底1m四方にはアユを5尾程度は養うだけのコケが生育しています。アユ1尾が持つナワバリもおよそ1m四方ですので、これはいささか強欲に過ぎると言えます。ところが、アユも何度か経験した氷河期にはコケの生育が悪くなるため、1m四方のナワバリは必要であったと想像されています。つまり、アユのナワバリは餌の少ない氷河期に成立し、そのなごりとして現在も維持されていると考えられたのです。 最近、この考え方に異論を唱える研究者が出てきました。中央水産研究所の井口恵一郎さんです。 今回紹介した中で、川那部さんの考え方は壮大で、正直なところ好きな考え方です。井口さんの考え方は少し無味乾燥した印象がありますが、現実的で多分正しいと思います。ただ、少し疑問もあります。川に潜って観察していますと、そこに棲む全てのアユがナワバリを持つことができるような状況であっても、全てのアユがナワバリを作っているという釣り人にはヨダレが出そうな光景は見たことがありません。損得のみでは推し量れない何かがあるのでしょうか? 最後に、気になることを一つ。 最近ナワバリを作るアユの割合が減ってきたように思えるのです。10年前ですと、ナワバリを持っているアユは普通20−80%いて、平均的には40%ぐらいはナワバリを持っていました。ところが、ここ数年では20%ぐらい居れば良い方で、ほとんど居ないということもめずらしくはなくなりました。最近はアユの数も減ってきているので、「多すぎて割合が低下している」ということではありません。観察した川や時期が違うので断定的なことは言えませんが、どうも確かな傾向のように思えるのです。 最近は釣り人の腕も上がって、ナワバリアユがすぐ釣られてしまうためかもしれません。でもそんなに簡単に釣りきられてしまうのでしょうか?潜って友釣りをした経験のある永浜名人も「釣れるのはナワバリアユの一部だけ」と言っています(詳しくは2000年版「最先端のアユ友釣り」を)。また、解禁前に川に潜ってもナワバリアユが少なくなったと感じます。感じでものを言うのは良くないのですが、解禁日の釣果、皆さんは低下していませんか?
|
